ライトノベル 涼宮ハルヒの消失 レビュー

タイトル 涼宮ハルヒの消失
著者 谷川流
イラスト いとうのいぢ
出版 角川スニーカー
発売日 2004年8月


執筆者:jade 評価:
1〜3巻の出来はお世辞にも褒められたものではなかったため、はっきり言っていとうのいぢさんのイラスト目当てで買っているこの涼宮ハルヒシリーズ。今回も小説の内容についてはまったく期待していなかったのですが良い意味で期待を裏切られました。だって面白いんですよ、あの悪名高き涼宮ハルヒシリーズが!(失礼
それでは早速内容に触れていきましょう。

今回の話は涼宮ハルヒ以下、SOS団のメンバー全員がキョンの前から姿を消すことから始まります。実際には存在しているのですがSOS団に関することをまったく覚えていない、言い換えれば彼女たちの中ではSOS団に関することは無かったことになっています。
これまでハルヒに嫌々ながら付き合って(いるというスタンスをとって)いたキョンにとってこれは望んでいた世界のはず。しかしながら何か釈然としない。何かが物足りない。その何かとは何なのか?このキョンの自問自答こそが今回の話のテーマ、というかすべてです。
この物語の最後でキョンはその答えを見つけ、自らの手でその答えを掴み取ることになるのですがこれが最終回であっても何ら違和感が無い素晴らしい幕切れ。まさかハルヒで感動するとは思いませんでしたよ(苦笑

もちろんキャラの魅力(ヒロインの可愛さ)は健在。今回は長門がヤヴァすぎです!最近ハルヒやみくるに飽きてきたせいもあり、長門っていいよなぁと思い始めていたのですが今回で一気に覚醒させられました!だっておとなしい読書好きの眼鏡っ娘ですよ!裾をちょこんと掴むんですよ!これが萌えずにいられますか!
長門可愛いよ長門(;´Д`)ハァハァ

キャラについてはもうこれ以上の説明は不要でしょう。ここからは今回の話が何故面白かったのか考察していきたいと思います。
そもそもこの作品が受け容れ難い(また逆にごく少数の人に高く評価されている)ところは独特の文体によって話が進められているところ、つまり地の文が主人公・キョンによる一人称視点で構成されているところにあります。
この試み自体はさして目新しいものではないんですが他の作品と著しく異彩を放っている部分があるんですね。それは心の中で思ったことと口に出したことが書き分けられて無いことです。そしてそれこそがこの作品の受け容れ難さの最大の原因になっているんですよ。だって明らかに心で思っただけのことにまで周りの登場人物が反応すればどうしても違和感を覚えてしまいますよね。それが単に表記していないだけで実際には口に出していることにしているという設定で最後まで通していれば慣れてくれば問題は無くなってくると思うのですが時折“「」”で括って発言するから始末が悪いんですよ。最初から最後まで一貫した姿勢をとっていなければそれは個性ではなく欠点として捉えられても仕方が無いことでしょう。

しかしながら今回はその部分に対してそんなに違和感を覚えることなくその独特な文章構成を受け入れることができました。それは何故か?自分(読者)がこの文章形式に慣れてきたからなのか、はたまた作者の方が慣れてきて書き方が上手くなってきたからなのか?もちろんこの二つに拠るものも少なからずあるでしょう。しかしそれ以上に大きかったのはキョン以外のキャラの登場が極端に少なかったことにあります。これによって余計なもの(他のキャラのセリフ)に邪魔されることなく、一人称による物語の進行が本来持つ小気味よいテンポが活きてくることに繋がったわけです。結局のところ一人称視点による地の文は主体となっているキャラの独白と言えるわけですからね。そういう展開に持ってくれば良さが生きてくるのは自明の理というわけです。
ただし誰が書いても魅力的な文章になるというわけではありません。この通り中盤は登場人物のセリフが極端に少なくほとんど地の文(キョンのセリフ)で埋められているのですが一度でも物語を書いたことがある人ならこの登場人物を極力排し、一人のキャラのみで物語を進めていく難しさはある程度理解できると思います。またそれと同時に谷川流さんの文章力の凄さも感じ取れると思います。

それではこれまでの巻でこの良さを殺してきたのは誰なのか?それはもちろん言わずと知れた主人公・涼宮ハルヒその人です。皮肉なことに涼宮ハルヒの物語は涼宮ハルヒ自身によって面白みのない物語へと貶められていたのです。
今回の話で露呈したこの究極の矛盾を抱えながら涼宮ハルヒの物語がこれからどういう展開を見せるのか?物語の単純な良し悪し以上に興味深いことではないかと思います。


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